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迅のオタ日記←
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「平気な振りして、そういう素振り見せないのが嫌だ」
「…え?」


それは突然、留さんが僕に言った言葉。
不貞腐れたように口を噤んで。

なんだ、留さんは、今、何を言ったんだ…?



「や、やぁだなー、そんなことないじゃないか」
「いいや、そんなことある」

徐に差し出された指が、僕の首を指し示す。

「…首は…あまり向けられても、いい気分じゃないね…、なに?どうしたの?」
「後ろ、向け」
「え?   …あっはは、敵に背後を取られるべから…「敵か?」
「いや、あ、違うけど、その、比喩?みたいな…っていうか、ちょ、ま…!」

留さんが僕に抱きつく。いきなりのことに正直
喜んでいいのか焦りなのか、よくわからない感情が湧き出てきた。

「えっ、え!?」
「俺だって馬鹿じゃない」
「ちょ、…っ、なに…」
「お前といるから、なんとなくわかるようにもなった」

するすると留さんが僕の首と髪の毛の間に手を入れて
まさぐり始めた。  やばい、非常にやばい。

「ま、まって!なに!?話を…」
「いやだ、…お前のことなんてなぁ、お見通しなんだよ…っ」
「ちょ、それは、すごく、素敵な言…  うぁっ痛っ!」
「うえ…、なんか、粘ついて・・・って、手当もしてねぇのか!?」
「あ、…あはは…」

髪の影にして見えないようにしていた首の後ろの傷を
ばっちり当てられた。
首といってもかなり背中に近いほうなので絶対に…

「ばれないと思ったのに…」
「阿保!保健委員長がしっかり手当も、ましてや消毒もしてねぇって何事だ!」
「だって、これ見たらみんな泣いちゃうもん、きっと…」
「…はぁ?」

これは自分の不運だ招いた傷ではない。
薬草取りの最中に、足を滑らせた下級生を助けようとしたときに
背中を強打して、その時に切れたもので。
自分からすれば、下級生をちゃんと守れた、名誉の負傷だったけど
当の本人たちは、大泣き。わんわん飛びつかれた。
だから

----怪我なんて、してないから…大丈夫だよ----

「泣かれるの、得意じゃない・・・もん」
「…もん、じゃねぇ」

渋々留さんに診てもらったが、留さんが背中越しに「エグい…」とか
言うから、やっぱりばれなかったら良かった。と思った。

「あ、ひとつ不運だったのは」
「んー?」
「新野先生が、出張されていたこと、かなぁ…」
「あー…」

本当だったら新野先生に見てもらおうと思ってたんだけど
それも叶わず…

「まあ、保健室の前で薬を持って待機してたあの子たちを見た時は
 …さすがに、居た堪れなくて、…それで長屋に戻ってきたんだ」
「ほー…いつもは他人の気持ち量る気ないお前が…」
「留さん、僕に喧嘩売ってる?」
「売ってませーん」
「…最近新しく調合してみた薬があって「ていうかさ!」

話を切り替えられた。留さんめ…。
少し間を切ってから、続ける。

「俺でいいじゃん、普通に」
「…?何が?」
「診るの、まあ、お前みたいに…専門じゃねぇけど」
「…え、えぇえぇ…留さんが…?」

まあ、いまも現に診てもらってるのですがね。
さすがに保健委員会でもない留さんに、診てもらってもいいけど…
やっぱり、できることなら…見せたくない…わけで…だって、…エグいし…?

「俺はお前頼ってるけど、なんかこう、一方的な気すんだよな」
「…   …・・・・  、    は?」

一方的?なに?え、どういうこと?

「ぼ、僕が頼りすぎなんだよ、っ!!そこは譲れない!!」

顔を留さんの方に向けて反抗する。

「譲れないってなんだよ!お前がいつ俺を頼ったんだよ!!」
「いつもじゃないか!迷惑はかけるし落とし穴に落ちるし!」
「そんなの頼ったうちに入らねぇ!!」
「嘘!!絶対入る!!ていうか、留さんこそ!!」
「俺はお前に手当てしてもらってる!毎度毎度!!」
「えええっ!!?そんなの僕が診せろっていうからでしょ!?」
「でも、そうでもいわれねぇと診せねぇし、伊作以外のやつに診られたく、ね…ぇ」
「なっ、きゅ、急に…声、小さく…しないでよ…」

さっきまで喧嘩みたいに言いあってたのに、留の赤面が自分にも飛び火して
あああ、すごく居た堪れない…っ
恥ずかしいから顔を前にむけなおす。
背中越しに、留さんの小さな「くそ…なんなんだよ…」が聞こえてきて
さらにこっちまで顔がほてるのを感じた。

「とに、か、く…その、…頼れ」
「…留さんが…頼ってくれたら…、た、頼らせていただきます…」
「だから・・・!」
「あーっちょっとまって、だめ、いま、見ないで!」

「おま、顔…真っ赤…」
「だああああっ留さんの方が赤いだろおおおおお!!!」














痛かった傷は、いつのまにか感じなくなってて
「留さん、魔法使いだね!」って笑ったら
「お、おう、まあな!」って、笑い返してくれた。
















夫婦^p^

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